無駄を削ぎ落とし、居心地の良さを追求したシンプルな住まいが、標高約1000mの森の中に佇んでいます。
住み心地を聞くと「とにかく気持ちいい」というこの家は、著名な造園家・ランドスケープデザイナーとして50年以上活躍されている中谷耿一郎さんのお宅です。

信州産のカラマツの板を巡らせた、すっきりとした外観が印象的です。
内壁にもカーテンボックスを除く全てに信州産のカラマツを用いており、森の気持ち良さが室内にいながら感じられるようです。カラマツは、固い材なので傷が付きにくく、重さもあるためドアの音漏れが気になりません。住んで1年半ほどの間、松ヤニは全く出ていないそうです。

大喜建設では設計も行っていますが、この家は住まい手である中谷さんご自身の設計。30年以上前に移住して建てた家から、庭を挟んだ向かい側に住み替える形です。
小屋裏スタイルのロフトがある21坪の家で、夫婦2人にとって十分とのこと。これまで家づくりに携わってきた経験を踏まえると、低めに小さめに建てるのが自然景観や維持管理、掃除などの面からちょうどいいのだそうです。


廊下を極力なくし、リビングの両隣にドアを挟んで書斎と寝室を配する造りは、家族間のコミュニケーションを取るのに最適。
家中の全てのLED照明に調光スイッチを付けたのも気に入っている点で、ろうそくのように控えめな明かりにまで絞れるので、夜にお手洗いに起きたときに目が冴え過ぎてしまうことがありません。

建築関連の造詣が深い中谷さんが、ご自身の家の施工に大喜建設を選んだわけを尋ねると、「仕事上付き合いがあって知っていて、一番は利根川さん(社長)の人柄でしょうね」とのこと。さまざまな意見が交錯する建築の現場でときにうまく対応する難しさがあるなか、大喜建設には昔から信頼感があったそうです。
「建築として一番大事なのは、壊れないこと、あったかいこと。それをしっかりやってくれる」。断熱材を敷き詰める作業など「びっくりするほど几帳面にやってくれた」と話していました。

寒冷地の家にとって、断熱は重視すべき部分。この家では壁の中の断熱材に加え、壁全体を包み込むように外断熱を施しています。基礎の断熱にも配慮。ちなみに水道管を地中に埋めることで、凍結防止ヒーターのコストの削減も叶いました。
この撮影に伺ったのは小雨がちらつく肌寒い日でしたが、家におじゃました途端心地よいあたたかさを感じ、暖房をつけていないと聞いて驚くほどでした。

冬には床下暖房が活躍します。最近の電気式床下暖房の性能は優れており、床下の1mほどの空間をあたためてその空気を室内に巡らせることで、浴室や玄関を含む家の中全体をほぼ温度差なく保つことができます。それも床下暖房を入れっぱなしにすると朝方暑くなるのでスイッチを切るとのこと。
薪ストーブは、暖を取るためというよりは、料理などの楽しみのために入れているとのことです。
陽が入る室内は、晴れていれば真冬に24.5℃にもなるそうです。

エアコンはなし。夏は朝に一度窓を開けてから閉めておけば、ひんやりした空気の中で過ごせます。

「家(建物)、庭、家具のバランスが取れているのが理想」だという中谷さん。
これからの家は性能が大事。そして本職である景観に溶け込む庭づくりを考えるのはもちろんのこと、ご友人の家具職人に依頼して作った栗の木のテーブルやベッドといった家具を厳選して置くことで、長く愛着を持てるものに囲まれる高原の暮らしを満喫しておられます。